新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
ああ。自己嫌悪……。
何だか悔しい気持ちで、中原さんと佐藤君の会話を聞きながら残っていたビールを勢いよく飲み干した。
「部屋割りも大変だったですよね。矢島さん」
「うん。かなり考えて組み合わせを決めても、それでも色々あって……」
「どうやっても、必ず何処かから口を挟まれるよな」
「そうなんですよ。中原さん。俺達が必死に考えて組み合わせても、何だかんだ言ってくる人がいるんですよ」
あの日、 『何で、幹事の貴女が1人部屋なのよ? しかも、隣は高橋さんじゃない。それって、思いっきり職権乱用よね?』 そう土屋さんに言われたんだった。
その土屋さんは、高橋さんの部屋の隣の部屋になって、今一緒に高橋さんの部屋に居て……。
旅行の幹事になってから、今日まで私は何をやっていたんだろう?
色々あったけれど、振り返って見ればあっという間だった気がする。
後悔の気持ちばかりが、浮かんでしまう。
そう思う度にお酒が進み、気づくとかなり酔っていた。
「もう、矢島さん。飲まない方がいいよ」
中原さんに、まだビールの入っていた缶を取り上げられてしまった。
「あっ! まだ、大丈夫です。それに、今日は帰らなくていいんですし……いいじゃないですか。もう少しだけ、飲ませて下さい」
中原さんから、缶を取り返そうと立ち上がった。
うわっ。
何か、ふらふらする。
「返して下さいよぉ。中原さん」
取り返そうとしてふらつき、中原さんに支えられながら床に座った。
「矢島さん。飲み過ぎだし、もう遅いから寝た方がいいよ」
「いいえ。まだ、飲みます」
「中原さん。もし、もう寝るんでしたら俺が付き合いますから大丈夫ですよ。どうぞ、寝て下さい」
何か、佐藤君が中原さんに言っている。
「お前に任せるのが、1番心配かもな」
「中原さん。そんな……」
2人の声が聞こえていたが、頭の中は高橋さんのことでいっぱいだった。
「佐藤こそ、気にしないでもう寝ていいぞ。宴会は終わったが、明日も幹事は色々大変なんじゃないのか? この分だと……もしかしたら矢島さんは、明日は当てにならないかもしれないし」
あれ?
「中原さん。何か、言いましたかぁ?」
何か、今呼ばれたような気がしたけれど。
「矢島さん。もう寝た方がいいぞ」
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