新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
「高橋さんは、中原さんには話せても、私には話せないんですものね」
思わず、高橋さんを睨みつけた。
すると高橋さんは、そんな私の態度に目を瞑ると大きく深呼吸をした。
高橋さんがその気なら、私だって……。
ふらふらしながら立ち上がって中原さんの傍まで行って、真横に高橋さんが居たが、わざと目を合わさないようにした
「中原さん。一緒に居てくれませんか?」
「えっ?」
「だって、中原さんは高橋さんと土屋さんの関係を知っているんですよね? それだったら、別に居てもらって構わないですから」
嫌な女だと思う。
でも、もう後には引けなくなっている。
お酒の力もあったけれど、この中途半端な高橋さんとの関係……。不安ばかりが募る、不透明な状況を早くはっきりさせたくて……。
駄目だ。
ふらふらしながら立っていたが、耐えられなくなってその場にまた座り込んでしまった。
「僕は、何も知らないよ。高橋さんから何も聞いていないし、勿論、土屋さんからも……」
「嘘です。だって、分かってあげて欲しいとか、ドリンクの差し入れがどうとかって、言ってたじゃないですか。私がいくら酔っているからって、そのくらいは覚えてますよ」
中原さんが、高橋さんを庇っているとしか思えない。
「矢島さん。そうじゃなくて……幹事を労うのがやっぱり二次会のメインなのに、多分そんなことをする人は居ないだろうからって。それで、高橋さんが僕にドリンクとつまみを渡してくれたんだ」
「だったら……どうして高橋さんは、此処に来てくれなかったんですか? 土屋さんと2人だけになるのは良くて、私達とは駄目なんですね」
最初は中原さんに言っていたのだが、途中から高橋さんを睨みながら言っていた。
自分でも分かっている。こんな、駄々を捏ねる子供のような態度。言葉尻を逆手にとって、人の揚げ足を取るような言動。
分かっているのに、酔った勢いに任せてどうにも止められない。
それでも、そんな私の訴えにも高橋さんは黙っている。
もう、何を言っても駄目なんだ。
高橋さんは、私がここまで言っても何も感じてくれない。
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