新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
うわっ。
久しぶりに至近距離で目が合い、ドキドキしてしまう。
「俺の仕事を知ってるよな?」
「えっ?」
「俺が、何の仕事をしているのか。お前も知ってるはずだよな?」
高橋さんの声は、想像していたものとは全く違っていた。
優しく、諭すように。
そうかといって、隙は見せない。
でも、懐かしい温もりが感じられて、怒った声を想像していたので少しだけホッとした。
「公認……会計士」
確かめるように高橋さんに聞かれて、呟くように自然に応えていた。
すると、高橋さんは頷いてそのまま私の横に座った。
「会計士にも、医者と一緒で守秘義務があるんだ」
守秘義務?
「それと土屋さんと、どういう関係があるんですか?」
自分でもしつこいと思ったが、どうしても土屋さんに直ぐ結びつけてしまっている。
「だから言えなかったし、言えないんだ」
な、何を?
言葉が足りないですよ、高橋さん。
「何を、言えなかったんですか? 何が、言えないんですか? すみません……高橋さん。高橋さんの言葉だけだと、私にはよく理解出来ないので、もっと詳しく説明して下さい」
酔った勢いというのは本当に怖いもので、幾らでも対等に言えてしまう。
きっと、飲んでいなかったら、絶対こんなことは言えなかったと思うもの。まして、聞き返すことなんて……。
「ああ、悪い。どうしても、言葉を選んでしまっているな。フッ……でもそれは、何時もか」
高橋さんが、少しだけはにかむように笑った
うっ。
駄目。
その笑顔は、狡い。反則だ。
酔っていても胸がキュンキュンいっているし。惚れた弱みなのか、やっぱりドキッとしてしまう。
「土屋から、あることで相談を受けている。それで、頻繁に会ったりしていた」
相談?
「でも、相談だけだったら何もそんな……私に隠す必要なんてないんじゃ……」
高橋さんに、疑いの目を向けてしまう。
「それならば聞くが、相談を受けているからと言った説明だけで、お前は納得したか?」
「えっ? そ、そんなこと……きっと納得したに決まっ……あ、あの……やっぱり分からないです」
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