新そよ風に乗って ⑥ 〜憧憬〜
高橋さん。
どうしちゃったの?
いったい、何があったの?
あのミサさんと、何か……あったの?
自問自答する時間だけが過ぎていき、気がつくと朝を迎えていた。
慌ててシャワーを浴びて会社に向かうと、事務所の席にはもう高橋さんも中原さんも座っていた。
「おはようございます」
「おはよう」
いつもと変わらない高橋さんと交わす挨拶。書類を持って行けば、何もなかったように普通に接してくれる。
もしかしたら、昨日の高橋さんが言ったことは夢だったんじゃないかと思えてしまう。
そして、今日も22時過ぎまで残業になってしまった。
「矢島さん。送っていくよ」
「えっ? あの……」
「じゃあ、鍵返しておきます。お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
中原さんが2階で降りたので一緒に降りようと思ったが、エレベーターの奥に乗っていたので降りる機会を逸してしまったことと、昨日のこともあったので素直に送ってもらうことにした。
いつものように同じ道を通ってマンションの前まで送ってくれたが、帰る途中も待ち望んでいた昨日のことには何も触れてもらえなかった。
「あ、あの……」
高橋さんが運転席から降りようとした時、耐えきれなくなって高橋さんの左腕を掴んでいた。
車から降りようとしていた高橋さんが、それに気づいてドアを持つ手を離し、助手席に座っている私の方を振り返った。
「何?」
「あの、昨日の話は……」
自分から高橋さんを呼び止めておいて、話し始めた途端、涙声になってしまったが、それでも高橋さんは私が言い終えるまで今日は待っていてくれている。
「あの……私、高橋さんに何かしてしまったんですか? 私のせいだとしたら……自分では分からなくて。その……何がいけなかったのか……教えて下さい。気づいてないとしたら、直さないと私……」
そこまで言って高橋さんの顔を見ると、昨日とは違って瞳も表情もとても穏やかな優しい顔をしていた。
「お前のせいじゃない。俺自身の問題だから」
エッ……。
高橋さんが、右手の親指でスッと私の右頬を伝う涙を拭うと、あっという間に運転席のドアを開けて車から降りてしまい、取り付く島もなく助手席のドアを開けた。
そして、有無を言わせないような雰囲気を醸し出して降りるよう促され、仕方なく助手席から降りた。
「お前は、今のままでいいんだよ」
優しく包み込むような声に、一層涙が溢れる
「高橋さん……」
昨日とは明らかに違う、いつもと変わらない優しい温かい瞳が私を捉えてくれている。
どうしちゃったの?
いったい、何があったの?
あのミサさんと、何か……あったの?
自問自答する時間だけが過ぎていき、気がつくと朝を迎えていた。
慌ててシャワーを浴びて会社に向かうと、事務所の席にはもう高橋さんも中原さんも座っていた。
「おはようございます」
「おはよう」
いつもと変わらない高橋さんと交わす挨拶。書類を持って行けば、何もなかったように普通に接してくれる。
もしかしたら、昨日の高橋さんが言ったことは夢だったんじゃないかと思えてしまう。
そして、今日も22時過ぎまで残業になってしまった。
「矢島さん。送っていくよ」
「えっ? あの……」
「じゃあ、鍵返しておきます。お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
中原さんが2階で降りたので一緒に降りようと思ったが、エレベーターの奥に乗っていたので降りる機会を逸してしまったことと、昨日のこともあったので素直に送ってもらうことにした。
いつものように同じ道を通ってマンションの前まで送ってくれたが、帰る途中も待ち望んでいた昨日のことには何も触れてもらえなかった。
「あ、あの……」
高橋さんが運転席から降りようとした時、耐えきれなくなって高橋さんの左腕を掴んでいた。
車から降りようとしていた高橋さんが、それに気づいてドアを持つ手を離し、助手席に座っている私の方を振り返った。
「何?」
「あの、昨日の話は……」
自分から高橋さんを呼び止めておいて、話し始めた途端、涙声になってしまったが、それでも高橋さんは私が言い終えるまで今日は待っていてくれている。
「あの……私、高橋さんに何かしてしまったんですか? 私のせいだとしたら……自分では分からなくて。その……何がいけなかったのか……教えて下さい。気づいてないとしたら、直さないと私……」
そこまで言って高橋さんの顔を見ると、昨日とは違って瞳も表情もとても穏やかな優しい顔をしていた。
「お前のせいじゃない。俺自身の問題だから」
エッ……。
高橋さんが、右手の親指でスッと私の右頬を伝う涙を拭うと、あっという間に運転席のドアを開けて車から降りてしまい、取り付く島もなく助手席のドアを開けた。
そして、有無を言わせないような雰囲気を醸し出して降りるよう促され、仕方なく助手席から降りた。
「お前は、今のままでいいんだよ」
優しく包み込むような声に、一層涙が溢れる
「高橋さん……」
昨日とは明らかに違う、いつもと変わらない優しい温かい瞳が私を捉えてくれている。