婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「オディール・ジャニーヌ侯爵令嬢」
にわかにレイが跪いた。彼の熱を帯びた視線がまっすぐにわたしを見据える。
「えっ――」
わたしが驚く間もなく、
「私、レイモンド・ローラントはあなたを愛しています。……どうか、私と――」
「ピャーッ!」
そのときだった。矢庭にヴェルがビュンと勢いよく飛んできて、レイの持ってあるダイヤモンドの指輪を嘴で咥えた。
「こ、こらっ! ヴェル! 返せ!」
レイが飛び上がって手を伸ばすが、ヴェルはひょいと躱して旋回してからわたしの左肩に止まった。
そして、わたしの掌の上にポトリと指輪を落として――、
「オディール・ローラント ハ オウタイシヒ ソレダケガトリエサ」
「えっ?」
わたしは目を丸くしたあと、一拍してみるみる頬を染める。
い、今……なんて…………。
「おいっ、ヴェル! 僕より先に言うなっ! プロポーズはこれからなんだぞっ!?」
レイが顔を真っ赤にさせながら叫んだ。
「ええぇっ!?」
びっくりして、わたしも叫んだ。
ヴェルは陽気に繰り返す。
「オディール・ローラント ハ オウタイシヒ ソレダケガトリエサ」
「「ヴェルっ!!」」
二人の重なった声が夜空に響く。


