麻衣ロード、そのイカレた軌跡⓽最終話/魂の交尾
迷宮へ…/その14
剣崎


ケイコは一度帰宅してきたようで、私服姿だった

「夕刻は”公用”でそのまま移動することになっててな。周囲は同じ年代の学生ばかりだし、”黒塗り”じゃあ視線が気になったよな。済まんな…」

俺は後部座席に乗り込んだケイコへ、意識的に試すような言葉で反応を伺った

「でも、一度乗ってみたかったんで…、黒ベンツ。うわあ…、さすがにゆったりですね。真ん中座っちゃっていいですか?」

「ああ、今日はおひとり様だからな。横になってもいいぞ」

ベンツの後部シートを独占して、ケイコはなんとも無邪気だった

つくづく普通の女子高生だ

毎回思うことだが…

車で移動して15分ちょっと

U市郊外の一画に着いた


...


「ああ、ここだ」

俺は車を2階建てアパートの前で止めた

「2階の左から2番目の部屋だ」

「はい…」

車を降りたケイコは俺の指さす方向へ目をやりながら頷いた

「麻衣の部屋は1階なんだがな。さすがにそこまで同条件は無理だった。無論、会長には了解してもらってる。まあ、麻衣は自分も2階がいいってダダこねるかもしれないが(苦笑)」

はは、階段を昇りながら、ケイコもこぼれ笑いをしているな

「これがカギだ。もう渡しておこう。開けてみろよ」

「あ…、はい」

ガチャッ…

「わー、きれいな部屋ですねえ…」

「今日からお前の部屋だ。入れよ」

「じゃあ、失礼します…」

築年数は結構経ってて1Kの狭い部屋だが、中は割ときれいで明るい

「エアコンもついてるんですね。すごいなー」

はは…、ケイコのヤツ、子供みたいにはしゃいで室内を見て回っているよ

まあ、俺からすれば実際、子供だが

どうやら気に入ってくれたようだ(笑)

...


「照明とカーテンは店に余ってるのをつけといたんで、後で自分の好みに変えてもいい。ああ、電話は週明けにつなげるが、電話番号は教えとこう」

俺はこの部屋の電話番号を記したメモをケイコに渡した

「電話代は組で持つ。それから電気や水道の光熱費もな。当然、家賃もだが(笑)」

「何から何まですいません。でも、せっかく借りてもらって何ですが、そこまでは必要ないような気もします。まあ、麻衣と同じ待遇ってのが前提だってことは承知してますが」

ケイコは急に神妙な顔つきでそう言ってきたわ

よし…、このタイミングで話しておくか

...


「…うん。だが、こっちからすれば、例のモンのことがな…。”それ”があるんでやはりな」

「…」

「”アレ”を嗜む場所はここか麻衣の部屋でってことを厳守してもらいたい。そういうことなんだ」

「はい、わかりました。ええと、明日の夜でいいんですよね」

「ああ、明日の夜6時に麻衣がここへ来る。…くどいようだが、大丈夫なんだな?」

「大丈夫です」

ケイコはきっぱりと言い切った

だが、目の前の16歳の娘が内心、どんなに不安を抱えているかを案じると胸が痛んだ

本当にいいのか!?

この子を更なる扉の向こうへ導いて…

俺は一瞬のうちに何度も自問自答を繰り返していたよ

ケイコ…

俺は以後、この時のコイツの表情を生涯、忘れることできなかった…





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