彼に潜む影
***

「具合はどう?」

ベッドに身体を起こして座っていた基治は、聞こえてきた声にゆっくりと振り向いた。それまでぼんやりと虚ろだった基治の目が、病室に入ってきた男を見た瞬間に大きく見開かれる。

基治の病室に入ってきた男の容姿が、自覚している自分の姿そのものだったからだ。

「お、前は……」

基治の反応を見て、病室に入ってきた男がニヤリとする。

「驚いたよな。俺も、最初は驚いた」

その話し方や態度で、基治は自分と同じ姿をした男が弟の鷹治なのだと気が付いた。

だったら、今ここにいる俺は……。

ふと横を見ると、窓ガラスにベッドに腰掛ける弟の鷹治の姿が映っていた。

基治が腕を動かすと、窓ガラスに映る鷹治が腕を動かす。基治が首を傾げると、ガラスに映る鷹治も首を横に傾ける。その事実に気付いた基治は、ゾッとして自分の両手のひらを見た。それから、ゆっくりと裏返して手の甲を見る。

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