彼に潜む影
これは、俺の手じゃない。指の長さや爪の形が、よく見慣れた自分のものとはまるで違った。
これはいったい、どうなってるんだ……?
「ほら、お前もそんなところに突っ立ってないで早く入れよ」
茫然とする基治のそばで、自分の姿をした鷹治が乱暴な口調で誰かを呼んでいる。
「やめて」
聞き慣れた声がして顔を上げると、恋人の愛佳が基治の姿をした鷹治に引き摺られるようにして病室に入ってきた。
「愛佳……」
基治が名前をつぶやいた瞬間、愛佳の表情が絶望に歪んだ。
「基治さん……」
腕をつかまれた愛佳が、泣きそうな目をする。鷹治は、そんな彼女の肩を馴れ馴れしく抱き寄せた。