再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています


『父さんはもう十分幸せに生きたが、唯一の心残りといえば千晶、お前だ。父さんの夢は花嫁ドレスを着た千晶とバージンロードを歩くことだったんだが、もう叶うことはないんだな』


あのときは軽く聞き流していた。

でも、もしも父のその夢が叶うのだとしたら?

ウエディングドレスを着た私とバージンロードを歩く日がすぐ目の前にあれば、それを目標にして父はまだまだ生きたいと思うようになるかもしれない。

でも、あいにく私には結婚の予定はないし、そもそも彼氏すらいない。

だから父の夢を今すぐ叶えるのはむりだ。


「千晶ちゃん」


加賀美さんに名前を呼ばれて、うつむいていた顔を上げる。


「俺にも佐波さんに会わせてくれないかな」

「もちろんそれは構いませんが。父の機嫌が悪くて失礼な態度を取ってしまったらすみません」

「大丈夫だよ。俺も佐波さんを説得してみるから」

「ありがとうございます」


頑固な父を誰も説得できなかった。こうなったらもう加賀美さんが頼みの綱だ。

父が本当の息子のようにかわいがっている彼ならきっと父の心を動かすことができるはず。

そんな期待を込めて、父の病室に向かった。

開いたままの扉から中の様子を窺う。頭まで布団を被った父はまだ不貞腐れているようだ。

そっと近付いて声をかける。


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