再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
「佐波さんにはまだまだ元気でいてもらわないと。退職したら俺に釣りを教えてくれるって約束していたじゃないですか。まさか忘れたんですか」
「覚えてるさ。でも加賀美くんにそんな時間はないだろ」
「佐波さんのためなら時間なんていくらでも作ります。だから早く元気になって退院してください」
穏やかに話しかける加賀美さん。
「佐波さんだってまだまだやりたいことたくさんあるでしょ」
「やりたいことか」
「なにかないんですか。俺に釣りを教える以外にも」
「そうだな……」
父が顎に手を添えながら考え込む。その視線が私に向かった。
「花嫁ドレスを着た千晶とバージンロードを歩きたい」
それは前回のお見舞いのときにも話していた父の夢だ。それを聞いた加賀美さんが優しく微笑む。
「千晶ちゃんの結婚式が楽しみってことですか」
「そうだな。千晶は俺が男手ひとつで育てた大事な娘だ。晴れ姿を見たいじゃないか」
切なげに瞼を伏せる父の横顔を見て、心臓が鷲掴みされたように苦しくなった。
私だって父と一緒にバージンロードを歩きたい。それが父への恩返しになるなら、その夢を叶えてあげたい。
「あと、孫の顔も見たいな」
下を向いていた父の顔が持ち上がる。