【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「ひゃあっ!」
反動で腕に力をこめて手を引っ込めようとするが、マリアの指先をしっかりと包み込んだジルベルトの手のひらがそれを許さない。
「不快じゃない。むしろマリアには、ジルベルトの名で呼んでほしい」
「で……でもっ、私、ウェインではあなたのお名前を呼び捨てにしたと……それは、とても重い罪だと言われました」
ジルベルトが呆れたように鼻を鳴らす。
「よいか。これからマリアが俺を呼ぶ時は、ジルベルトだ。敬称も要らぬ。この先、誰に何を言われようがそれをやめる必要はない。《《俺が》》、許す」
「でっ、でもっっ。きっとまた誰かに不敬だと叱られます」
「俺が許すと言ったのだ。マリアを不敬に問うなど、誰であっても許さぬ」
マリア——。
耳朶をくすぐるような甘い声で、もう一度、名前を呼ばれた。
マリアの華奢な手は、ジルベルトの筋張った大きな手のひらに強く掴まれたままだ。
ジルベルトの秀麗な面差しにゆるやかな笑みが灯り、マリアを見つめるアイスブルーの瞳が優しく揺れている。