【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「そ……っ、それ、は……」

 マリアの方も激しく戸惑っていた。ジルベルトの戸惑いとは、全く違った意味合いで。

 マリアにとって、シャルロワ国を滅亡に追いやったのがアスガルト帝国であって、帝国軍の筆頭が世に言われる『冷酷皇太子』だ。

 ——シャルロワの王女がただひとりで生き残り、雲隠れをしていることは皇太子も把握しているはず。もしも見つかれば、皆と同じように私も殺されてしまう……!

 ジルベルトが憂慮する『冷酷皇太子』たる所以が二人の兄殺しだと言うことは、マリアは知らぬ事実である。

「皇城に行くのは、嫌か?」

 マリアはぎゅっと唇を強く引き結ぶ。

「……嫌……です」
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