【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「でもっ……目の端に、ほんの少しでも、映れるのなら……。今よりも少しだけ、自分を整え直したいです」

 ジルベルトへの想いのこもった言葉を少しずつ紡ぎながら、マリアは俯いて真っ紅に頬を染めている。そんなマリアが、ラムダの濃紫色の瞳にはいじましく映った。

「マリア様。今宵はジルベルト様のお部屋に伺う初めての夜です。念入りに身支度をいたしましょう。わたくしが精一杯、お手伝いをいたしますから……!」

 土気色だったラムダの顔色がにわかに鮮やかさを取り戻す。深紫の丸い瞳が瞬く間に潤んだ。
 けれどマリアには、ラムダが張り切る理由がわからない。

 ——えと、念入りに身支度……? お話し相手の仕事というのは、おやすみ前のお茶汲み係のことですよね??

 華奢な首を傾げて、マリアは丸い目を更にきょとんと丸くした。





 *——————



「マリア……?」

 疲労の色を滲ませたジルベルトが自室に戻ったとき、そこにマリアの姿はなく。

 ——まだ来ていないのか。
< 123 / 580 >

この作品をシェア

pagetop