【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「私に優しく接してくださって。ジルの面倒を見てくださって」
「いいえ。それがわたくしの仕事ですから」
「湯殿で初めてお会いした時は、なんだかお疲れのご様子でしたから、少し心配だったのです。ラムダさんは私の事以外にもお仕事をされているのでしょう? 何か私に、お手伝いできることがあればと思って……」
「ご心配には及びません。いえ、疲れていたと言うか……」
ラムダは、心の中で独り言ちる。
——これまでは、本気で仕事をする気持ちになれなかったと言うか。
「皇宮への出仕は父の身勝手な申し出なのです。父にすれば『可愛い子には旅をさせよ』と言う意図なのでしょうが」
「お優しいお父様。ラムダさんは、お父様の愛情をしっかりと受けていらっしゃるのですね」
身寄りが無いと聞くマリアは、勿論父親もいないのだろう。
心なしか表情を曇らせたマリアに、家族の話をしてしまったことをラムダは少し悔やんだ。
「昨日お話しましたように……わたくしは絵を描く事を好むので、世界の厳しさを学ぶよりも、本当はもっと絵の勉強がしたいのです。与えられた部屋は相部屋で、そこで描くのも難しいですし」
ラムダは肩をすくめる。