【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「あ……の……」

 マリアの右手は、ジルベルトの大きな手のひらにやんわりと包まれたままだ。無理に引っ張るわけにもいかず、どうして良いかわからずにマリアは目を泳がせる。

 ジルベルトの親指が、マリアの手の甲を、す、と滑った。

「苦労をしてきた人の手だ。マリアは幼な子の頃から働いていたのか? そう言えば年齢の話をした事がなかったな。マリアは……何歳(いくつ)だ?」

 もうじき十八歳の成人だと、言いかけた。
 ——が、ふと思いどとまる。

 誕生日が迫っているのは本当だけれど。
 王女リュシエンヌの年齢が万が一にも帝国側に知られていれば、十八歳という正しい情報はジルベルトにも告げないほうが良いだろう。

 ——ジルベルトは、皇族かも知れないのですよね……?

「来月の初めに、二十歳になります」

 聞いたばかりのラムダの年齢が咄嗟に口を突いて出た。ジルベルトは僅かばかり眉根を寄せる。

 ——月初めに誕生日を迎えるのか。
 二十歳にしては幼い気もするが、華奢な身体つきの所為(せい)で幼げに見えるのかも知れない。

「ジルベルト、あなたは……?」
「マリアの三つ年嵩だ」

「二十三歳……てっきり、もっと上だとっ」
「実年齢よりも老けて見えるとよく言われるよ」
「ふ、老けているなんだんて、違います! 言葉使いや振る舞いが、落ち着いていらっしゃるだけです」

 それにしても。
 ジルベルトはいつ、マリアの手を離してくれるのだろう?

「私の手は傷だらけで荒れているので、お目汚しにしかなりません。そんなふうに見つめないでください……っ」
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