【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
——アスガルド帝国の実権を握る皇太子セルヴィウスは冷酷非道で、国民はおろか、戦争でやむなく《《かたわ》》になった兵士たちにさえ恩情は与えないと聞いていたのに。
「国民は国の宝だ。帝都の民はどんな者であっても最低限の生活を与えられる権利を持っている。帝国は、ただ当前のようにそれを与える。そのための政務なんだよ」
ジルベルトは遠い目をしながら青い空を見上げていた。
第三皇子であるジルベルトも、その政務に関わっているはずだ。
「皇太子殿下も、あなたも。帝都の民が笑顔でいられるような政治を、なさっておられるのですね」
「えっ?」
空を仰いでいた眼差しが、不意にマリアを見下ろした。
マリアが微笑みかければ、ジルベルトはふ、と頬を緩めて——気のせいだろうか。
その表情が幾分、誇らしさと喜びを滲ませたように見えたのは……。
「警吏のお兄さんたち、さようなら! 明日もまた来るね!」
円陣を組んでいた子供たちが、わぁっと歓声をあげながらマリアたちのそばを走り去って行く。
マリアに返事をする代わりに。
ジルベルトは繋いだ手をぎゅ、と強く握り返した。
「……行こう。君を待ちわびている者たちがいる」