黒瀬くんは、"あの"一匹オオカミちゃんを一途に溺愛したいらしい。
手に取って見てみると、それは『どんな腹痛も、これ一錠!〜最強の胃薬〜』と記載された胃薬だった。
そしてメモには、『これめっちゃ効くから飲みなね』と一言。
「……」
黒瀬真中だ。
きっとアイツは、いいヤツなんだろう。
嫌われていたり、一人になっている人を見過ごせないタイプの人間だ。
「……っ」
だから余計に、嫌いなんだ。
黒瀬真中という男のことが。
私は薬とメモをそのまま隣の机へ戻して、席につく。
席替えはいつするのだろうか。
本当なら今すぐにでもしてもらいたいくらいだ。
この際、教師から距離が一番近い前の席でも喜んで移動するのに。
黒瀬真中のとなりにいるより何倍もいい。
とにかくあの男とはなるべく関わらず、何を言われても無視する。
そう決意したと同時に、一限が終わるチャイムが鳴り響いた。