ー野に咲く花の冒険譚ー

振り返れば消えそうな命に,足が震えた。

1秒でも早く。

そう力を込め跳ねる。

僕へ葉の攻撃が飛んできた。

冷静にと心で唱えながら,目を大きく開き動体視力をあげる。



「甘いな」



ドンが言った。

咄嗟に振り向いた僕に,僕を守るリリィが他へも茎を伸ばす。

自身も大きくなったその葉の先には,後ろで難航していた隊員達がいた。

リリィよりも序列が低く,力の弱いバラでは僕に届かない。

最初から狙いは,僕の弱み。

帰れば家族のいる,今は遠征のために馬を持たない騎士達が汚い床に臥していく。

最後に立って僕の瞳に映ったのは



「タルト……!」



悲痛な叫びが,向けた手のひらの向こうに消えていった。

大剣を振るい,悔しそうに。

タルトの得物が5つに割れる。

タルトは,4本もの攻撃に耐えきれず貫かれた。

助かる助からないの話ではない。



「お前の絶望は,ここからだ───ジョセフィーネ=マリア·エレクトロ」



表情ひとつ変える余裕もないまま,タルトは逝った。
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