君を思い出す季節
ミーンミンミン ジーミンミン

「あー今日も暑いなー」

「セミもなくの飽きんのかな」

今日は土曜日

午前の部活が終わって奈美と一緒に帰っているところ

電車が止まってドアが開くと、もあっとした風が車内に入ってきて暑い

「じゃーね!」

「バイバーイ」

途中の乗り換えで奈美と別れた

学校から約1時間かけて家に帰った時には制服がじっとりと湿っていた

シャワーを浴びてお昼ご飯を食べる

もう3時だ

この前希美に教えてもらったオレンジメイクを試してみた

お気に入りの黒の短めのブラウスにジーパンを合わせてネックレスをつける

この前買った白基調のネイルチップもつけた

2年伸ばした長い髪を巻いて完成

そうしていると電車に乗らないといけない時間になっていた

自転車で最寄り駅まで移動して電車に乗り待ち合わせの駅まで行く

「なぎー!」

希美が手を振って駆け寄ってくる

「希美!模試お疲れ!」

「疲れたー全然できんかったよー、なぎに会えるから頑張ったけどね!」

そんな可愛いことを言ってくれる

「きゃっ希美すきー」

「わたしも大好き」

なんで会話をしながら会場まで歩く

結構大きいお祭りだから人が多い

30分ほど歩いてやっと屋台のある場所に着いた

「わー何食べる!?」

「かき氷でしょ」

「仕方ないなーなぎに合わせよう」

「いちごください!」

「マンゴーください!」

近くの階段に腰掛けて食べる

「うわーしみる夏最高!」

それから焼きそば、イカ焼き、綿菓子、りんご飴、を食べた

「あーお腹いっぱい」

「食べすぎたー」

なんて話していると上から視線を感じて目線を上げた

その時世界が止まった気がした

さっきまでの屋台の会話や笑い声、すれ違う人の会話が聞こえなくなった

目線の先には気まずそうな顔をした彼、
吉永一樹がいた

教室、音楽室、運動場、帰り道、夕焼け、田んぼ、、目があった時の笑顔、手が触れてしまった時の戸惑いの顔、サッカーをする姿、、、
いろんな光景がフラッシュバックする

「吉永、ひ、さしぶり」

「久しぶり、瀬戸」

そう言って笑った

わたしとあまり変わらなかったはずの背はとっくにわたしを置いて伸び、差は15センチくらいだろうか、

短かった髪は目にかかるほど伸びていて、白かった肌は少し黒くなっている

でも笑顔は1年半前と変わってなかった

吉永だ、

本物だ、

ずっとわたしの頭の片隅にあった人

ずっと会いたかった人

会いたかったけど会いたくなかった人

「じゃあなぎ!ちょっと彼氏呼んでるから行ってくるね!また連絡する!」

「あ、うん!」

希美が何か察したように去って行く

希美に彼氏はいないのに、

ありがと、希美

「久しぶりだね」

「うん」

彼はまだ気まずそうだ

「会えて嬉しい」

言っちゃった

「え、」

あの時と同じ

少し困った顔を浮かべている

「ちょっと話したい」

わたしはそう言って彼の手を引いて近くの公園に行った
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