君を思い出す季節
「瀬戸ちゃん」
彼はわたしをそう呼んでいた
その声が大好きだった
中学1年生
ワクワクとドキドキで胸を膨らませてた4月
私の小学校は1学年1クラスしかない小さな学校だったから、中学校に上がる時に隣の小学校と合体する
隣の小学校は1学年3クラスあって、中学校では圧倒的にその小学校の子が多かったから最初は心細かった
でもすぐにいろんな友達ができて楽しい中学校生活を送っていた、
あの時までは
人数が少なかったからか、小学校では男女仲がよく性別関係なくみんな友達だった
でも中学校では違ったようだ
わたしは小学校の感覚で男子とも結構仲良くしていた
それを気に入らなく思った女子がいたらしい
急だった本当に
誰かが瀬戸渚はぶりっ子だとかいう噂を流し、一瞬にして友達がいなくなった
テレビや漫画で見るような陰湿なイジメなんかではない
ただ無視されてたまにすれ違う時に嫌味を言われるくらいだ
でも当時の私には結構こたえた
学校に行っても誰も話してくれない
まるでいないかのように扱われる毎日
でも学校を休んだら負ける気がして絶対に休まないと誓っていた
ある日ホームルームの後、誰かがわたしの席にぶつかり机の中に入っていた教科書が派手に散らばった
周りの女子は笑っていた
わたしはしゃがんでそれを拾おうとした、1人で
でも1人じゃなかった
1人の男子が一緒にしゃがんで手伝ってくれた
それが吉永だった
何も言わず無言で、手伝ってくれた
そのうち教室から人がいなくなった
拾い終わると彼は去ろうとした
「ありがとう」
わたしは掠れた声で一言、そう言った
学校で授業以外で声を出したのは久しぶりだった
「おう」
彼はそう言って笑った
それから彼はたまに話しかけてくれるようになった
ほんとに不定期に
それがまた心地よかった
無視は2ヶ月ほどでおさまった
わたしの後に、ことあるごとに次々とターゲットを変えて、卒業するまで繰り返されていた
気の毒だけどわたしは彼のように助けることはできなかった
だけどせめてと思ってその子と少しだけ話すようにしていた
完全に自己満足だけど、それで誰かがわたしのように救われてたらいいなと思っていた
おさまってから吉永と話すことは減った
それでも2年もクラス一緒だったから接点はあった
音楽でお琴が重くて困ってたら一緒に持ってくれたり、班長会で向かいに座った時手が触れたり、
そんな一つ一つにドキドキしていた
心臓が締め付けられる感覚を知った
いつからかわたしは彼に恋をしていた
優しくて、頭が良くて、周りをよく見ていて、、
授業中の真面目でハキハキと答える姿も、
休み時間に男子とふざける姿も、
体育祭を全力で頑張る姿も、
委員長としてクラスをまとめる姿も、
わたしが落ち込んでるとき、ちょっと寒いギャグで笑わせようとしてくれるところも、
全部大好きだった
実は寂しがりやで、責任感が強すぎて、ギャグが滑るとちょっと落ち込んでいることも知っていた
3年になってクラスが離れたときはショックで泣きそうだった
でも何とか接点を増やそうと部活終わり帰るのを待ってみたり、彼のいるクラスの友達に頻繁に会いに行ったり、、
毎日がとにかく楽しくて仕方なかった
彼が私を好きだったかどうかはわからない
でも当時のわたしは自信がなかった
卒業式の日、友達に背中を押され、帰っている吉永を呼び止めて言った
「ずっと好きでした」
彼は固まっていた
二重の目を大きく開いて
真っ黒い瞳を大きくして
その沈黙が耐えられなくて
「それだけだから!ありがと!」
そう言ってわたしは引き返してしまった
このとき約2年半の片思いが終わった
あの時すぐに返事をしなかった彼
呼び止められなかったから、わたしに可能性はなかったんだとすごく落ち込んだ
そのあとからキラキラ輝いてた世界が、一瞬でまるで白黒の世界のように色がなくなってしまった
高校生になって新しい友達ができて、恋バナが弾んだ時いつも吉永が頭に浮かんで離れなかった
でもわたしはずっと気づかないふりをしていた
でも気づいてしまった
会ってしまったから
私はまだ彼が好きだ
彼はわたしをそう呼んでいた
その声が大好きだった
中学1年生
ワクワクとドキドキで胸を膨らませてた4月
私の小学校は1学年1クラスしかない小さな学校だったから、中学校に上がる時に隣の小学校と合体する
隣の小学校は1学年3クラスあって、中学校では圧倒的にその小学校の子が多かったから最初は心細かった
でもすぐにいろんな友達ができて楽しい中学校生活を送っていた、
あの時までは
人数が少なかったからか、小学校では男女仲がよく性別関係なくみんな友達だった
でも中学校では違ったようだ
わたしは小学校の感覚で男子とも結構仲良くしていた
それを気に入らなく思った女子がいたらしい
急だった本当に
誰かが瀬戸渚はぶりっ子だとかいう噂を流し、一瞬にして友達がいなくなった
テレビや漫画で見るような陰湿なイジメなんかではない
ただ無視されてたまにすれ違う時に嫌味を言われるくらいだ
でも当時の私には結構こたえた
学校に行っても誰も話してくれない
まるでいないかのように扱われる毎日
でも学校を休んだら負ける気がして絶対に休まないと誓っていた
ある日ホームルームの後、誰かがわたしの席にぶつかり机の中に入っていた教科書が派手に散らばった
周りの女子は笑っていた
わたしはしゃがんでそれを拾おうとした、1人で
でも1人じゃなかった
1人の男子が一緒にしゃがんで手伝ってくれた
それが吉永だった
何も言わず無言で、手伝ってくれた
そのうち教室から人がいなくなった
拾い終わると彼は去ろうとした
「ありがとう」
わたしは掠れた声で一言、そう言った
学校で授業以外で声を出したのは久しぶりだった
「おう」
彼はそう言って笑った
それから彼はたまに話しかけてくれるようになった
ほんとに不定期に
それがまた心地よかった
無視は2ヶ月ほどでおさまった
わたしの後に、ことあるごとに次々とターゲットを変えて、卒業するまで繰り返されていた
気の毒だけどわたしは彼のように助けることはできなかった
だけどせめてと思ってその子と少しだけ話すようにしていた
完全に自己満足だけど、それで誰かがわたしのように救われてたらいいなと思っていた
おさまってから吉永と話すことは減った
それでも2年もクラス一緒だったから接点はあった
音楽でお琴が重くて困ってたら一緒に持ってくれたり、班長会で向かいに座った時手が触れたり、
そんな一つ一つにドキドキしていた
心臓が締め付けられる感覚を知った
いつからかわたしは彼に恋をしていた
優しくて、頭が良くて、周りをよく見ていて、、
授業中の真面目でハキハキと答える姿も、
休み時間に男子とふざける姿も、
体育祭を全力で頑張る姿も、
委員長としてクラスをまとめる姿も、
わたしが落ち込んでるとき、ちょっと寒いギャグで笑わせようとしてくれるところも、
全部大好きだった
実は寂しがりやで、責任感が強すぎて、ギャグが滑るとちょっと落ち込んでいることも知っていた
3年になってクラスが離れたときはショックで泣きそうだった
でも何とか接点を増やそうと部活終わり帰るのを待ってみたり、彼のいるクラスの友達に頻繁に会いに行ったり、、
毎日がとにかく楽しくて仕方なかった
彼が私を好きだったかどうかはわからない
でも当時のわたしは自信がなかった
卒業式の日、友達に背中を押され、帰っている吉永を呼び止めて言った
「ずっと好きでした」
彼は固まっていた
二重の目を大きく開いて
真っ黒い瞳を大きくして
その沈黙が耐えられなくて
「それだけだから!ありがと!」
そう言ってわたしは引き返してしまった
このとき約2年半の片思いが終わった
あの時すぐに返事をしなかった彼
呼び止められなかったから、わたしに可能性はなかったんだとすごく落ち込んだ
そのあとからキラキラ輝いてた世界が、一瞬でまるで白黒の世界のように色がなくなってしまった
高校生になって新しい友達ができて、恋バナが弾んだ時いつも吉永が頭に浮かんで離れなかった
でもわたしはずっと気づかないふりをしていた
でも気づいてしまった
会ってしまったから
私はまだ彼が好きだ