冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「自分からっていうのはなかったみたいだけど、彼もタイミングが合えばって感じて言われれば応じていて時々彼女はいたんだけど、あまり長続きはしなかったのよ」
 
彼女はそこで言葉を切って、"どうしてだと思う?"というように日奈子を見る。日奈子が首を傾げると、くすりと笑って、また口を開いた。

「彼女側の愚痴は噂でよく回ってきたんだけど、彼忙しかったからなかなか会えないのよ」
 
その話は納得だった。

学生の本分は学業だが、彼はすでに経営者としての道も歩み始めていたのだから。ほかの学生よりは忙しかったに違いない。

「まぁ、仕事やレポートの時間は仕方がないけどね。せっかく開いたスケジュールの中に、妹みたいな親戚の子の家庭教師っていうのがちょくちょく入る、これが許せないってね」
 
そう言って美鈴はふふふと笑った。

「あなたでしょう?」

「え⁉︎ えー……、そうですね。……おそらく」
 
尋ねられて、ドギマギしながら日奈子は答えた。
 
宗一郎が大学生の頃、日奈子は中学生。勉強がぐんと難しくなってついていけなくなっていた。

まわりは塾に行っていたけれど、母にそんな経済的余裕がなかったから、自力でなんとかしなくてはならなかったからだ。
 
そしたら宗一郎が家庭教師を申し出てくれて、彼の都合がつく日にお願いすることになったのだ。

忙しいのだから無理はしないでほしいと母は彼に何度も言っていて、実際たくさんの時間を取れたというわけではない。

それでも週に何回かは時間を作ってくれた。

「せっかく空いた自由な時間を、妹みたいな親戚の中学生に取られるんだもの彼女としては許せわよね。でもそんな子よりも私を優先してって言ったら、もれなくフラれちゃうんだって一時期噂になってたのよ。フラれた娘たちの中には、シスコン男なんて罵ってる娘もいたけど、結局はそんな評判まったく影響なくモテまくっていたけどね」
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