冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
頭の片隅で聞いた美鈴の声に、自分の声が重なったような気がした。

「……かるもん」
 
呟くと、宗一郎が笑うのをやめて日奈子を見た。

「日奈子?」

「私にだってわかるもん。男の人を愛してるっていう気持ちがどういうものなのか」
 
そう言って日奈子は宗一郎を見つめる。彼への気持ちが、いつ変わったのか正確にはわからない。

でも今この瞬間胸を満たしているこの想いは紛れもなく彼への愛情だ。日奈子は世界でただひとり彼だけを愛している。
 
いつになく真剣な表情の日奈子に、宗一郎が目を見開いた。

「日奈子……?」

「あの初恋の話は嘘だけど……。だけど、私……」
 
そう言って宗一郎を見つめると、痛いくらいに胸が高鳴る。自分の気持ちに正直に素直でいたいという思いに突き動かされるのを感じている。
 
熱い想いでいっぱいで息苦しさすら感じるくらいだった。

「私……私……!」

「……日奈子」
 
宗一郎が、一段低い声を出した。
 
自分を見つめる彼の瞳になにかが灯り、腰に腕が回される。引き寄せられ、腕の中に閉じ込められると、彼の香りが濃くなった。

「日奈子、自分を愛してると言う男を前にして、そんな顔をするんじゃない。なにをされても文句は言えない。……俺は、夜はあの約束を守れないと言ったはずだ」
< 129 / 201 >

この作品をシェア

pagetop