冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
すぐ近くで日奈子を見つめて咎めるように彼は言う。いつもとは少し違うその視線に日奈子の身体は熱くなった。
 
紳士的で理性的な普段の彼とは明らかに違う。

日奈子の返事しだいではいつでもその線を越えてやるとその視線が告げている。その甘い警告に日奈子の脳がちりりと痺れる。こくりと喉を鳴らして口を開いた。

「……わかってる。それもちゃんと、わかってる」
 
その日奈子の答えに、宗一郎が眉を寄せて、唇を歪めた。
 
親指が、日奈子の唇をゆっくり辿る。

「んっ……」
 
それだけで、吐息が漏れてしまいそうで日奈子はそれを必死に耐えた。
 
まるで感覚のすべてがそこに集中したみたいに、彼の親指の感覚だけをリアルに感じている。

身体の奥底の熱いなにかが、溶け出るような感覚だ。

いつもは優しく自分を見つめる彼が、今は怖いくらいに鋭く日奈子を見つめている。

今すぐにでも食べ尽くされそうな危機感におそわれて、日奈子の背中を甘いぞくぞくが駆け抜けてゆく。

もう一秒だって耐えられないと思うのに彼はもう一度ゆっくりと唇を指で辿る。
 
怖いくらいに、日奈子を見つめたまま。

「あっ……」
 
日奈子の口から漏れた声に、宗一郎が動いた。
 
抱き込まれ、そのまま唇を奪われる。
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