冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「万里子さんは私にとって、お義母さまとの橋渡しをしてくれるお姉さんのような存在だったから。私、ひなちゃんのことも自分の子のように大切に思ってる。だから万里子さんの気持ちがよくわかるの。万里子さんはきっと、ひなちゃんがうちとは関係のない仕事をしていても喜んでくれているわよ」
 
自分を見つめる眼差しは、ありし日の母を彷彿とさせる。それをジッと見つめて、日奈子は頷いた。

「はい。……そう思います」

これもよくかけられていた言葉だ。でもまるで今はじめて言われたかのように日奈子の心に染み渡った。母はきっと、日奈子が元気でいるだけで喜んでくれているだろう。

「だからね、ひなちゃん。私たち、父と母のような気持ちで、ひなちゃんにいいお話を持ってきたのよ」
 
そう言って敬子が本題に入る。
 
いよいよだと緊張する日奈子に向かって、封筒を差し出した。
 
首を傾げて彼女を見ると、にっこりと笑って頷く。

中を見てほしいということだ。戸惑いながら手を伸ばすと寸前で宗一郎に奪われた。

「あ」

「ちょっと、宗一郎!」

敬子の抗議を無視して彼は封筒を開き中身を確認する。驚いたことに封筒の中身は、見合いの釣書だった。

穏やかに微笑む男性の写真の肩書きは、日奈子でもよく耳にする不動産会社の取締役常務だ。
 
敬子が日奈子に向かって補足する。

「社長の次男さんで、やり手で将来有望だって話なのよ。真面目で優しそうな方でしょう? 一度会ってみない?」
 
つまりはいい話というのは見合いの話だったということだ。
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