冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「業界の知り合いが愚痴ってたんだよ。後輩が何人か痛い目に遭ったらしい」
 
その言葉に、ふたりは顔を見合わせて黙り込んだ。

宗介は現社長ではあるものの、宗一郎が副社長に就任してからは、ほとんどの権限を移譲している。自分よりも息子の方が有能で頭がキレると知っているからだ。
 
その彼からの情報は無視できないようだった。

「……なら、ひなちゃんには相応しくない相手だな」
 
ため息をついて釣書を封筒に戻した。
 
そこへ宗一郎が文句を言う。

「日奈子に見合い話を持ってくるのはやめてくれと言ってるだろう。まだ時期尚早だと何度言ったらわかるんだ。しかも俺を通さずに日奈子に直接言おうとするなんて、どういうつもりだ?」
 
敬子が不満そうにした。

「あなたを通したら全部潰しちゃうからじゃない。確かにひなちゃんの気持ちも大切にしなきゃいけないけど、こういう話はタイミングも大事だもの。いい話は逃さないようにしなきゃ」

「いい話が聞いて呆れる。こんな男を日奈子に会わせようとするなんて」

「これは……。ちょっとよくなかったけど、宗一郎の条件も厳しすぎ。一番大事にしなきゃいけないのは、ひなちゃんとの相性なのに」
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