冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
睨み合いあれやこれやと言い合うふたりを、宗介があたふたと止めようとする。

「こ、これお前たち、落ち着きなさい」

が、あまり効果はなかった。
 
一方で日奈子は心底驚いていた。今のやり取りが本当なら、九条夫妻はもうすでに何度か日奈子に見合いの話を用意していたというわけだ。そしてそれを宗一郎が止めていた……。

「もうこの際だから、ひなちゃんに言っておくわ。これからは宗一郎は飛ばして、直接話を持っていくことにする。もちろん今回のような変な人じゃないか十分注意するから……」
 
その言葉に日奈子は慌てて首を横に振る。

「だけど奥さま、こんなすごい肩書きの方は私には釣り合わないと思います」
 
今回の相手だって中身はともかくとして肩書きは立派すぎる。日奈子には釣り合わない。
 
いくら娘のように可愛がっているとはいっても日奈子は九条家と血の繋がりはないのに。
 
すると敬子は「肩書き?」と言って瞬きをして、首を傾げる。
 
日奈子は頷いた。

「そうです。それから家柄も……。旦那さまと奥さまの紹介なら、お話はたくさん来るのかなと思いますが、本当は血のつながりがないって先方がお知りになったら差し障りがあるんじゃないでしょうか」
 
血の繋がりがないどころか、かつての家政婦の子なのだ。騙されたと言われても仕方がない。
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