冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「もちろんあるわよ」
 
敬子が答えた。

「断っても断ってもくるわ。でもこの子に伝えたところで……」
 
言いながら宗一郎を見る。

「必要ない。相手は自分で選ぶ」
 
言い切る彼に、ほらねというような肩をすくめた。

「それに母親としても結婚相手として宗一郎がすごくおすすめかといわれたら、どうなのかわからない部分もあるのよ。そりゃ息子だから可愛くないわけじゃないけど、いまいちなにを考えているのかわからないところがあるじゃない? ひなちゃんにべったりだし。奥さんになる方は苦労するんじゃないかしら」
 
母親にめちゃくちゃ言われても宗一郎は平然としている。
 
宗介が困ったように微笑んだ。

「早く自分で納得いく相手を選んでくれることを祈るばかりだよ」
 
これも日奈子にとっては意外な話だった。今の話が本心なら、九条夫妻は宗一郎の相手についてノータッチというわけか。
 
ということは、彼の結婚相手にこだわっていたのは、彼の祖母だけだったということだ。
 
日奈子の見合い話がダメになったからか、敬子は急に宗一郎の方が気になり出したようだ。彼に向かって小言を言う。

「宗一郎、お義母さんが生きていらしたら叱られるわよ。『早くいい結婚をしてホテル九条をさらに発展させなさい』っていつも言われていたでしょう?」
 
その言葉に、日奈子の胸がドキンと鳴った。
母が絶対に守るように日奈子に厳命したあの言葉だからだ。

「またその話か。そんなもの簡単に見つからないよ」
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