冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～

「たくさん食べるんだぞ。明日からは少し忙しくなる」
　
日奈子は首を傾げた。

「忙しくなる？　私が？」
　
問いかけながら、自分の予定を思い出す。確かに仕事のシフトは入っているが、それはいつものこと。特に思いあたることはない。
　
宗一郎がにっこりと笑って、訳を説明した。

「結婚に向けての準備がはじまるだろう？　まずは引越し。あのマンションは、やっぱりセキュリティが心配だからな。とりあえず手狭かもしれないが、一日でも早くここへの引越しをすませる。時期を見てもっと広いところへ引っ越そう。両親への報告は明日にでも俺がしておくよ。それから式は全部日奈子が選んでいいから……」

「ちょ、ちょっと待って宗くん……！　け、結婚って……、ひ、引越しって……？」
　
日奈子は目を剥いてむせる。
　
確かにふたりで生きていくと心に決めたけれど、結ばれたのはつい昨日のことなのだ。明日から引越しの準備なんて、あまりにも急すぎる。
　
宗一郎が日奈子にオレンジジュースを差し出して不満そうにした。

「なにを驚くことがあるんだ。結婚するなら当然のことだろう？」
　
オレンジジュースを飲み心を落ち着けて日奈子は答えた。

「だけど、そんな急に」

「急じゃない。いつそうなってもいいように、俺は準備してあった。引っ越しはいつでもできるよう手配してあるし、日奈子が好きそうな結婚式会場のリストもピックアップしてあるからな」