冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～

あたりまえのことのように言う彼を見ながら、美鈴の言葉を思い出す。

『いつの間にか結婚してた、なんてことになりかねない』と言った彼女の言葉を、その時は大袈裟だと思っていたけれど……。
　
オレンジジュースのグラスを握りしめて、日奈子は込み上げてくる笑いを噛み殺す。
　
美鈴が言った通り、日奈子は彼から逃げられそうにない。

日奈子が彼の気持ちに応えられなくても関係は変わらないと言いながら、用意周到に準備は進めていたくらいなのだから。もちろん逃げたいなどとは思わないけれど……。

「日奈子？」
　
宗一郎が首を傾げる。
　
日奈子は笑いながら首を横に振った。

「ううん、なんでもない……！」
　
だけど、これが幸せだと心の底から思う。
　
彼と共に歩む未来。
　
一度は諦めたその道が目の前に真っ直ぐに続いている。

「宗くん、私たち絶対に幸せになろうね」
　
嬉しい気持ちで胸をいっぱいにしながらそう言うと、少し唐突な日奈子の言葉に、宗一郎が一瞬驚いたように瞬きをする。すぐに柔らかく微笑んだ。

「ああ、絶対に幸せにする」
　
その視線がゆっくりと近づいて……。
　
ふたりの唇がそっと触れ合った時、オレンジジュースの氷がカランと音を立てた。