冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
そして心から祝福してくれて、ホテル九条東京のスタッフとして、今日の結婚式の花嫁介添人に立候補してくれたのだ。

『式に出席したい気もするけど、取引先の方々ももたくさん出席されるだろうし。お祝いはさ、また別で個人的にさせてよ。当日はしっかり日奈子のサポートをしたい』
 
おそらくは血の繋がった家族がいない日奈子を思いやってくれているのだ。
 
ホテル九条東京に入社してからの付き合いだが、厳しい研修と志を同じくして働いたという経験は濃い時間でだからこそ絆は深い。

それを改めて実感した気分で、日奈子はその申し出をありがたく受けた。

「緊張してる? 日奈子」

「うん、ちょっと……。だけど莉子がサポートしてくれるから、すごく心強い。ご新婦さまの介添人がどれだけ重要な役割か身をもってわかったよ」

「だよね。私も自分のことのように緊張するけど、冷静でいなくちゃって思ってるよ。私の時は、日奈子お願いね。相手はまだいないけど」
 
肩をすくめていう彼女に日奈子はふふふと笑みを漏らした。

「任せて」
 
莉子はくすくす笑って、えへんと咳払いしてスタッフの顔に戻り口を開いた。

「では式開始十分前にお声がけいたします。エントランスにて招待客のお出迎えをされていた新郎のご両親がまもなくこちらの部屋へお見えになる予定です」
 
本来なら、新郎新婦の控室は別だが、日奈子には両親がいない。むしろ新郎の両親が親代わりだから、同じ部屋にしようということになったのだ。
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