冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
こんな時、たいてい彼は理論的に日奈子が納得できるように話をしてくれる。今回もそうするのだと思っていたのに。
 
なぜか今は、次の言葉を見つけられないかのように、どこか迷っているように思えた。

「宗くん……?」
 
呼びかけると彼は顔を上げて、日奈子を見る。

真剣な表情に日奈子の胸がドキリとした。

言い過ぎてしまったのだ。

"それならもう好きにしろ、俺は知らない"と言われるだろうと覚悟する。

けれど彼の口から出た言葉は意外なものだった。

「結婚相手を探している、だから合コンに行ったということは、今現在は好きな奴はいないんだな?」

「え? ……うん」
 
戸惑いながら日奈子は答える。
 
すると宗一郎はまたしばらく沈黙して、一旦息を吐いてから口を開いた。

「なら、日奈子、俺と結婚してくれ。俺がその結婚相手になる」
 
その彼の言葉に、日奈子は目を見開いて固まった。

聞き間違いか、そうでないなら、彼は冗談を言っているのだろう。
 
仕事では厳しくて無口だと思われている彼だが、プライベートはそうではない。昔から日奈子とふたりだけの時は面白いことを言って日奈子を笑わせることがよくあった。

だから今も……。
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