冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～
だってそうでないと、どう考えてもおかしな言葉だ。

「そ、宗くん、こんな時に」

＂冗談言わないで＂と言いかけて、日奈子はハッとして口を閉じる。彼の表情が真剣そのものだったからである。

とても冗談を言っているようには思えなかった。代わりに、頭に浮かんだ疑問を口にする。

「……どうして？」
　
本当にわからなかった。結婚は、愛し合う者同士がするものなのだ。なのにどうして彼はこんなことを言うのだろう？
　
その日奈子の問いかけに、宗一郎は一瞬苦々しい表情になる。

でもすぐに気を取り直したように真っ直ぐに日奈子を見つめた。

「俺が、日奈子を愛しているからだ」
　
息が止まるかと思うほど驚いて、日奈子はもう瞬きすらできなくなってしまう。
　
シンプルな言葉のはずの彼の答えを理解できなかった。今度こそタチの悪い冗談か、あるいはからかわれているのだろう。

でもやっぱり目の前の宗一郎は真剣で、冗談などではないとその表情が物語っている。
　
宗一郎がため息をついた。

「本当は、こんな形で言うつもりはなかったんだが……。日奈子が結婚相手を探して、飲み会に参加しているなら黙っているわけにはいかない。今から相手を探すくらいなら、俺と結婚してくれ。一生、大切にする」

「そんな……いつから？」
　
彼が本気だとしても、だからといって信じられる話ではなかった。

日奈子の記憶にある限り、彼はずっと兄として日奈子を大切に思ってくれていたはずだ。
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