冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
彼の言葉が本当ならば、いったいどこで変わったというのだろう。
 
宗一郎がやや傷ましそうに顔を歪めた。

「はっきりと自覚したのは、万里子さんが亡くなった後だ。傷つく日奈子が元気になるのなら、なにを引き換えにしても構わないと思ったんだ。一生日奈子のそばにいて必ず幸せにすると決意した」

「だけど、そんなことひと言も……」

「言えなかったんだ。悲しみから立ち直れていない日奈子を混乱させたくなかったから。だから俺は日奈子が本当の意味で立ち直るまで待っていた」
 
そう言って彼は悲しげに日奈子を見た。
 
母が亡くなって丸三年、立ち直るには十分な時間かもしれない。実際日奈子は、社会人として自立して生活できている。

でもまだ本当の意味で立ち直れているとはいえなかった。

大きな喪失感を抱えながらノートを頼りに日々を過ごしている。彼はそれを知っているのだ。

「で、でもそんな素ぶりは少しも……」

「この気持ちがどういう種類のものでも俺にとって日奈子が大切だということは、今も昔も変わらない。やることは同じだ」
 
言い切る彼に、日奈子の胸は熱くなる。これほどまでに深く想われていたことに感動を覚えるくらいだった。

「宗くん……」
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