冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
舞台に登場した彼女の圧倒的な存在感に、こういった場に慣れているはずの報道陣からもため息が漏れた。

「さすがだな、美鈴は」

「ああ、だけどホテル九条の副社長の方も、モデル顔負けじゃないか。あそこまでとは思わなかった」

「こりゃ熱愛は、本物かもしれないな」
 
そばにいる雑誌記者が囁き合うのが耳に入り、日奈子の胸がズキンと鳴った。
 
同時に、一週間前に自分が下した決断は間違いではなかったという確信を深めていた。母の言葉がなくたって、日奈子と宗一郎が一緒になる未来など、誰から見ても間違いだ。
 
舞台上で、宗一郎が美鈴をエスコートするように自分の隣の位置に促す。

視線を合わせてから前方を向いてふたり並んで笑顔を浮かべる。

「完璧なふたりじゃないか」

記者たちがまた口を開いた。

「美鈴は今はロサンゼルスに拠点を移しているだろう。日本国内のホテルのアンバサダーなんて仕事を受けたこと自体が驚きだと言われているが、副社長との個人的な繋がりがあるからだろう」

「ああ、間違いない。しっかり追え」
 
意味深な言葉を交わす記者たちの言葉に、日奈子の胸はズキズキと痛みはじめていた。
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