冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
頭を下げる日奈子に、美鈴が眉を寄せて「よろしく」と言って頷いた。

心なしか顔色が悪い。

「さっそくで申し訳ないけど、鎮痛剤置いてない? マネージャーにもらい忘れちゃった」
 
言いながらこめかみを押さえている。どうやら頭が痛いようだ。

さっき疲れたと連発していたから、疲労からくるものかもしれない。

「市販のものはひと通り揃えておりますが。鳳さま先程のレセプションでアルコールをお召しになられていますので……」
 
躊躇して日奈子が言うと、美鈴が「ああ、そうだった」と言って、ドサッとソファに倒れ込んだ。

「なら大丈夫、ありがとう。またなにかあったらお願いするわ」
 
出て行っていいということだ。だがこのままではつらいだろう。日奈子は迷いながら提案する。

「あの、ホットタオルをお持ちしましょうか? 首筋にあてれば楽になるかもしれません」
 
宗一郎の祖母富美子に、母がよくやっていた方法だ。

富美子は頭痛持ちだったが、薬嫌いで市販薬はまったく飲まなかった。
 
美鈴は肘置きに突っ伏したまましばらく考えて「お願い」と言った。
 
一旦スタッフルームに戻りホットタオルをふたつ盆に乗せて戻ってくる。
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