冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
光る数字を見つめたまま宗一郎が念を押す。その横顔に日奈子は訴えた。

「自分で帰ります。だ、だって……」
 
言いかけて、口を閉じて躊躇する。
 
日奈子は彼のプロポーズを断った。あの時に兄と妹のような関係も終わったのだから、送ってもらう理由はない。

「だって。私たちは、もう……」
 
そう日奈子が言いかけた時、宗一郎がこちらを見た。
 
その視線に、日奈子の胸がドクンと震える。あの夜とまったく同じ熱を含んだ眼差しに、息が止まるような心地がして口を閉じた。
 
代わりに宗一郎が口を開いた。

「あの時俺は言ったはずだ。なにがあっても俺にとって日奈子が特別で一番大切なことに変わりはない。日奈子が俺の気持ちを受け入れられないとしても、やることは変わらない」
 
強い口調で言い切った時、エレベーターがポーンと鳴り、目的の階に到着した。

「いつもの場所だぞ、わかったな」
 
言い残して、彼はエレベーターを降りていった。

残された日奈子は、鼓動がスピードを上げるのを感じながら、胸のところで拳を作りギュッと握りしめた。
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