冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
外国から来た宿泊客の中には東京の街を近未来の世界のようだと感想を漏らす者がいる。

キラキラと輝くネオンが夜空を明るく染めている。
 
冷たい窓ガラスに手をついて日奈子は、ライトアップされたホテル九条東京を見つめていた。

「なんだ、ジッと見て。夜景なんてべつに珍しくもないだろう?」
 
後ろで宗一郎がジャケットを脱ぎながら問いかけた。確かに、東京の夜景はホテルの上層階からも見えるから日奈子にとってはさほど珍しいものではない。

でもこの景色が自宅のリビングから見えるというのが驚きだ。

「宗くん、すごいとこに住んでるんだね。だいたいの場所は知ってたけど」
 
日奈子がこうやって彼のマンションに来るのははじめてだ。

「場所で選ぶとこうなっただけだよ。なにか飲むか? といってもあるのは、ミネラルウォーターとアルコール類くらいだけど」

「じゃあ、水を」
 
答えると彼はキッチンへ行く。その後ろ姿を見つめながら、日奈子はこの状況に不安を覚えていた。
 
いつものように宗一郎の車に乗った日奈子に、彼は話があるから時間をくれと言った。それに日奈子が頷くとここへ連れてこられたのである。
 
話の内容が、この前のプロポーズに関係することだろうという予想はつく。でも詳細がわからなくて不安だった。
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