冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
最近のふたりのメッセージのやり取りは、遅番の日の事務連絡が中心だ。役員である彼は、ホテルのデータベースへアクセスして日奈子のシフトを確認することができる。

大抵は遅番の日の何日か前に、迎えに行けるかどうかのメッセージが入る。

彼が来られないときは必ずタクシーを使えという小言つきだ。
 
でも今日は、メッセージが届かなかったから、ふたりの関係は完全に切れたのだと日奈子は思った。

「レセプションの準備にかかりきりで日奈子の遅番を今朝まで見落としていた。まぁ、それだけじゃなくて落ち込んでいたっていうのもあるが」
 
彼の言葉に日奈子は首を傾げる。

「落ち込んで……?」

「ああ、日奈子にフラれたからな」

「フッフラれ……⁉︎」
 
目を剥く日奈子に宗一郎がやや不満げな声を出した。

「なんだ、間違いじゃないだろう?」
 
それはそうかもしれないが、今日の美鈴と並んでもまったく見劣りしなかった彼ほどの人物には、そぐわない言葉のように思えた。
 
宗一郎がソファに身を預けた。

「日奈子に対する想いに気がついてから、俺は日奈子を混乱させないように細心の注意を払って、気持ちを隠し続けてきた。日奈子が元気になるまで、何年でも待つつもりだったのに……焦って言ってしまったんだ。……俺の人生の中で、こんな失敗ははじめてだ。その上、バッサリフラれたんだから、落ち込むのも無理はないだろう? だから今日はやり直しをさせてもらおうと思ってここへ来てもらった」
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