冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
どうしてだろうと首を傾げながら、宗一郎の手元を見て、思わず声をあげてしまう。

「え、どうして?」
 
彼の方はちゃんと柴犬になっている。彼だってはじめてのはずなのに。

「なに?」
 
宗一郎が手を止めた。

「宗くんの方は、ちゃんと柴犬に見える!」
 
どちらかというと柴犬の方が難しそうなのに、ちゃんとそれらしくなっているのが驚きだ。
 
だけどそういえば、と日奈子は昔のことを思い出す。小さい頃から彼はパズルや、駒回しなどなんでも器用におしえてくれた。

歳上だから、上手にできたというのもあるだろうが、もともとなんでもそうなくこなすことができるのだろう。

「柴犬に見えるって……。あたりまえだろう、柴犬を作ってるんだから」

「だけどはじめてなんでしょう? 柴犬、可愛い……」
 
日奈子の頬に自然と笑みが浮かんだ。

「はじめてでこんなに上手にできるなんて、やっぱり宗くんって、すごいのね」
 
にっこりとして彼を見ると、宗一郎が目を開いた。そのままフリーズしている。

「宗くん?」
 
尋ねると日奈子から目を逸らし、咳払いをした。

「いや……。ちょっと、用事を思い出した。一件電話をかけてくる」
 
そう言って部屋を出ていった。
 
少し意外な彼の行動に、日奈子はできかけの柴犬を見て首を傾げる。

それにしても彼の柴犬は上手だ。日奈子の方が手作り歴は長いのに、これは負けていられないぞと気合を入れて、オカメインコをチクチク刺しはじめた。
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