冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～

青い空のもと広がる東京の街を見つめて美鈴が言う。
　
学生時代から親しくしていたとはいえ、互いに恋愛感情などなかった彼女との熱愛疑惑には正直なところはじめは戸惑った。

それを否定せずにそのままにしてほしいと頼まれたのを受け入れたのは、彼女に対して同志のような思いを抱いているからだ。
　
生まれながらにして、古いしがらみや重いものを背負う名家の出身として。
　
彼女はそれらすべてのものから解き放たれて自由な世界で生きていく。
　
宗一郎は、その世界の中心で覚悟を持って生きていく。
　
進む道は違っても、成功をして幸せを掴んでほしいと心から思う。

「おめでとう、幸運を祈るよ」

「ありがとう。だからもう少しだけ我慢してちょうだい。私が日本を立ったら正式に結婚を発表して、エージェントからあなたとの噂についても否定します」

「わざわざ否定するのか？」
　
当初の予定では結婚発表だけのはずだ。熱愛疑惑など、ＳＮＳ上の怪情報のようなものだ。

当然ながら、決定的な写真などは撮られていないのだから、彼女がすべてを手放しイタリアにいるとなればすぐに立ち消える。