冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～

　帰っていく美鈴と入れ替わるように顔を出したのは宗一郎の秘書室に所属する男性秘書だった。

「副社長、ミーティングお疲れさまでした」

「ああ、ありがとう」

「一時間後の役員会議まで少し時間がありますから、それまでゆっくりお休みください」
　
休みつまり時間が空くということだ。反射的に宗一郎は口を開きかける。

「では……」
　
近くのホテル九条東京に足を運ぼうと言いかけるが、秘書がそれを遮った。

「副社長、現場視察のお時間はまた別で調整します」
　
いつもと違う少し強い調子の彼の言葉に、宗一郎は口を閉じた。

つまりは彼は今の時間は休憩にあてて、現場視察へは行くなと言っているのだ。
　
宗一郎は意外な思いで彼を見る。
　
こんなことははじめてだった。
　
意を決して意見したのだろう。拳を作る秘書の手が少し震えている。その彼を見つめながら、宗一郎は彼のこの意外な行動の意味を考えた。
　
今宗一郎が休憩時間を潰して現場へ顔を出すことのなにが不都合なのだろう？

思案する宗一郎に、秘書が口を開いた。

「休日も、先週取られたようにこれからは丸一日取っていただきたく思います」