ヒーローは間違えない〜誰がために鐘は鳴るのか〜
「悔しかったね」

「そう!辛いんじゃない。悔しい。私は悪くないのになんで理不尽に怒鳴られるの?馬鹿にされるの?どうして黙ってなきゃいけないのよ!」

いつの間にかヒカルは泣いていた。

病院での霧雨のようなシトシトとした泣き方ではない。

ヒックヒックと、暴風雨のような泣き方になっていた。

「おいで」

ユウリは、ヒカルの横に椅子をずらすと、両手を広げてヒカルを抱き寄せ包みこんだ。

イケメンのいい匂いに思わずうっとりしそうになったが、これは、一歩間違えば、酔っ払いに乗じたセクハラ案件とも言われかねない危険な状況である。

しかし、彼は幼馴染だからね?(本当にそう言えるのかはおいといて)。

鼻水や涙による汚染云々には目をつぶり、この際、役得?的な状況を満喫して、鬱憤晴らしをしようと、酔っぱらいヒカルは開き直った。

「ユウリぃ〜、私、悔しい」

わんわん泣き続けるヒカル。

その劣悪な目汁鼻汁によって高級なスーツを汚染されながらも微笑むユウリは、大人である。

『彼は間違いなく、器の大きい男だ』

と、後に、酔いから覚めたヒカルは真剣に語ったという…。

(誰に?)。

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