ヒーローは間違えない〜誰がために鐘は鳴るのか〜
誰かの逞しい腕に支えられて安定感を得ている自身の身体。
その人が歩くたびに、横抱きされた身体がフワフワと上下するのを感じる。
幼い頃、うっかりうたた寝をしてしまった時、父親に抱えられてベッドまで運んでもらった、遠いあの頃を思い出す。
しかし‥‥
今の自分は、自立したアラサー女子のはずだ。
27歳の立派な女性が、お姫様抱っこで運ばれるシチュエーションなど、そうそうあることではない。
“飲んでも飲まれるな”
この教訓は、老若男女、世代を問わずいつの世においても真理である。
飲酒下の、しかも意識が朦朧としている危険な状況で、例えば自ら酒に酔ってしまった場合、最悪誰かに何かをされても自己責任と言わざるをえないだろう。
警戒心の強いはずのヒカルが、何故、誰かに運ばれるという、想定外の状況に陥ったのか?
イタリアンバールでイケメン相手に管を巻いたところまでは覚えている。
もしも、ヒカルが急性アルコール中毒で救急隊に搬送されているのならば、間違いなく担架での搬送のはず。
間違っても、恋愛ドラマのように、勇ましくお姫様抱っこで移動する救急隊員がいる、なんてのは空想の世界だけの願望だ。
のほほんと、ほろ酔い気分でそんなことを考えるヒカル。
そんな呑気な娘を現実に引き戻すのは、いつだって父親の愛あるゲンコツだった。
「こら、ヒカル!2回もユウリくんに迷惑をかけおって」
「2回?!」
見に覚えのない過去と、目の覚めるようなゲンコツの痛さに、ヒカルはガバっと体を起こした。
「こんな状況で失礼します。お久しぶりです。貢(みつぐ)さん」
抱きかかえられて接近しているユウリの口元から、超絶イケボが耳元近くて囁かれて、ヒカルは思わず身じろぎをした。
「すまないね、ユウリくん。久しぶりの再会だというのに、愚娘の酒乱に付き合わせて」
この毒舌魔王。
このゲンコツ野郎こそが、この度のモラハラ問題における元凶ともいえる、ヒカルの父、月野貢、65歳である。
「ユウリ‥‥?」
「お目覚めかな、ヒカル姫」
酔い覚めの一発が、イケメン王子様からのイケメンボイスとか。
『過剰な供給ありがとう』
、的な棚ぼた案件ではあるのだが、そんなラッキーシチュエーションも、父親の怒りの般若顔を直視してしまっては全てが台無しである。
ヒカルは慌てて地面に足を下ろして起立の姿勢を取ろうと試みる。
しかし、酔ってふらついた身体を再びイケメンに支えられ、さらなる迷惑をかけてしまうという負の連鎖は断ち切れずにいた。
それが、新たなげんこつの呼び水となり、
ヒカルは『いかなる状況に陥っても、二度と深酒に逃げることはすまい』と心に誓うのであった。
その人が歩くたびに、横抱きされた身体がフワフワと上下するのを感じる。
幼い頃、うっかりうたた寝をしてしまった時、父親に抱えられてベッドまで運んでもらった、遠いあの頃を思い出す。
しかし‥‥
今の自分は、自立したアラサー女子のはずだ。
27歳の立派な女性が、お姫様抱っこで運ばれるシチュエーションなど、そうそうあることではない。
“飲んでも飲まれるな”
この教訓は、老若男女、世代を問わずいつの世においても真理である。
飲酒下の、しかも意識が朦朧としている危険な状況で、例えば自ら酒に酔ってしまった場合、最悪誰かに何かをされても自己責任と言わざるをえないだろう。
警戒心の強いはずのヒカルが、何故、誰かに運ばれるという、想定外の状況に陥ったのか?
イタリアンバールでイケメン相手に管を巻いたところまでは覚えている。
もしも、ヒカルが急性アルコール中毒で救急隊に搬送されているのならば、間違いなく担架での搬送のはず。
間違っても、恋愛ドラマのように、勇ましくお姫様抱っこで移動する救急隊員がいる、なんてのは空想の世界だけの願望だ。
のほほんと、ほろ酔い気分でそんなことを考えるヒカル。
そんな呑気な娘を現実に引き戻すのは、いつだって父親の愛あるゲンコツだった。
「こら、ヒカル!2回もユウリくんに迷惑をかけおって」
「2回?!」
見に覚えのない過去と、目の覚めるようなゲンコツの痛さに、ヒカルはガバっと体を起こした。
「こんな状況で失礼します。お久しぶりです。貢(みつぐ)さん」
抱きかかえられて接近しているユウリの口元から、超絶イケボが耳元近くて囁かれて、ヒカルは思わず身じろぎをした。
「すまないね、ユウリくん。久しぶりの再会だというのに、愚娘の酒乱に付き合わせて」
この毒舌魔王。
このゲンコツ野郎こそが、この度のモラハラ問題における元凶ともいえる、ヒカルの父、月野貢、65歳である。
「ユウリ‥‥?」
「お目覚めかな、ヒカル姫」
酔い覚めの一発が、イケメン王子様からのイケメンボイスとか。
『過剰な供給ありがとう』
、的な棚ぼた案件ではあるのだが、そんなラッキーシチュエーションも、父親の怒りの般若顔を直視してしまっては全てが台無しである。
ヒカルは慌てて地面に足を下ろして起立の姿勢を取ろうと試みる。
しかし、酔ってふらついた身体を再びイケメンに支えられ、さらなる迷惑をかけてしまうという負の連鎖は断ち切れずにいた。
それが、新たなげんこつの呼び水となり、
ヒカルは『いかなる状況に陥っても、二度と深酒に逃げることはすまい』と心に誓うのであった。