ヒーローは間違えない〜誰がために鐘は鳴るのか〜
「そうだ、今度、おじが外泊する際に富士の別荘に泊まりたいって言ってたんですよ。貢さんとヒカルも一緒にどうですか?22年ぶりにあの周辺がどうなっているか、興味はありませんか?」

富士の別荘には、ヒカルが5歳の夏の間の1ヶ月間だけお世話になったことがある。

あの頃は新之助前社長の奥様も健在で、新之助自身も生気に満ち溢れていた。

おそらく、今度の外泊が最後の機会になるだろう。

ヒカルも貢も、何とも言えない表情でユウリを見つめたが、おじの最後という重たい状況をユウリ1人に押し付けるわけにもいかないと、貢は笑顔で同席を承諾してしまった。

だからって、今のこのドロドロとした感情で、果たして新之助に優しくできるのかな…?

ヒカルは、酔った頭をグルグルと思考の渦に落としながらも必死で考えた。

「いや、無理」

酔った頭は即答だ。

ムリムリムリムリムリムリ。

脳内には常にハザードランプが点滅し、警報音を鳴らし続ける。

「ヒカルの好きな、グレートピレニーズがいるよ」

「行きます!」

22年前にもいたグレートピレニーズ。

彼はとっくに天に召されている。

「親子2匹」

「なんと!」

可愛いが2倍。

病んでいるからこそ、疲労が増している今だからこそ会いたい!癒やされたい!

こやつ、絶妙にヒカルの欲求をついてくるな。

やはりこのイケメンモデル(仮)、地味に策士である。

過去に1ヶ月も別荘に入り浸ったのは、かの白いグレートピレニーズ(大型犬)がいたからに他ならない。

それほどにヒカルは大型犬が好きだった。

しかし、当時からヒカルの母が犬の毛アレルギーであったため、自宅での飼育は無理であり、諦めていた状況での別荘滞在。明日

だからこそ、あの貴重な1ヶ月間は、ヒカルの宝物でもあり、穢されたくない過去なのであった。

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