ヒーローは間違えない〜誰がために鐘は鳴るのか〜
「ユウリ」

「おじさん、ご無沙汰しております」

ユウリと呼ばれたイケメンモデル(仮)は長い脚を優雅に交差させながらヒカルに近づき、そっとハンカチを差し出した。

アイロンのピッシリとかかったブルー・グレーのシルクのハンカチ。

片膝をついて首を傾げながら、笑顔を振りまくのその所作の美しさ。

”イケメンかよ(イケメンだよ)“

「ありがとうございます。綺麗なハンカチを汚いもので汚すわけにはいきません。こちら(ティッシュ)で間に合ってます」

ヒカルは見たこともないイケメンの顔面偏差値の高さに慄いて、即座にハンカチを断わった。

「じゃあ俺が拭ってあげるから」

綺麗な顔が近づいてきて、ヒカルは一瞬仰け反ったが、強引な言葉に反して、彼の手つきはとても優しかった。

「手筈は整ったのかい?」 

「ああ」

ヒカルの背中を優しくポンポンと叩いてあやしていた新之助と、ハンカチで涙&もろもろ···を拭ってくれるイケメンモデル?ユウリに挟まれて、ヒカルは固まっていた。

そういえば、さっき、ユウリは新之助を叔父上と呼んでいた気がする…が、まさかあの優柔不断な弟専務の息子?!

ヒカルは改めてマジマジと、新之助と会話をするユウリの顔を見つめた、が···結局は

“いや、似ても似つかない。知り合いのおじさんという意味だろう。私と新之助の関係のように。

それほど似ていない、あり得ない程のヒカルにとってのドストライクイケメン。

ブラウンの柔らかそうなツーブロックアップバングショートヘアはできる男感を増し増しである。

太陽に透かしたような、薄茶色の光彩も、同色の長いまつげも好ましい。

眼福の一択である。

「ようやくだな。本当にヒカルちゃんには苦労をかけた」

「えっ?!私、ですか?」

二人の話を聞いていなかったヒカルは、突然自分の名前が出てきたことで我に返った。

そういえば、仕事のせいで泣いていたんだっけ、言われて思い出すほどに、ユウリの顔面に食いついてしまっていたのかと、ヒカルは恥ずかしくなった。

"ようやく"の意味するところは分からないが、

「大丈夫、です(たぶん)」

イケメン(の顔面と所作)に瞬時に癒やされて、怒りや悲しみを忘れるくらいの"ゆとり"がまだあることがわかっただけでも良かったのかもしれない。

ヒカルは、現金な自分に呆れながらも、この優しくて愚かな恩人が天寿を全うするまでは、今の職場で頑張れるかな、と少しだけやる気を盛り返すことができた(かもしれない)。

イケメンに感謝。

なのかな?


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