鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「そう言えば、玄関に積んであるパッキン(段ボールのこと)は?」
「あぁ、あれは他社製品だ」
「他社製品?」
「市場調査のために、売れ筋製品を適当に見繕うように三井に指示出しておいたから」
「見てもいい?」
「それは別に構わないが」
「じゃあ、いっくんが仕事してる間、ちょっと見て来るね」
夕食を終え、常務から連絡が入った伊織は、リビングで組織変革の最終書類をチェックしている。
新年度から社内規則等を変えるらしい。
婚約者であっても、一介の社員。
役員でもない栞那が見ていいものではないため、栞那はその間に他社製品を見ようと玄関へと。
パッキン自体はBellissimoのものだが、開封すると、新生児用の肌着からキッズ用の服、ジュニアからシニアに至るまでの服や下着が沢山入っていた。
下着だけではなく、医療用のものや介護用品に至っては、サポーターのようなものからコルセットのようなものまで入っている。
「すごーいっ!マタニティウェアってこういうつくりしてるのね」
身近に妊婦の人がいなくて、見たことがなかった。
胸元のデザインはレディースとほぼ同じように見えるのに、授乳用に切り替えが入っていたり、スナップボタンで開閉できるようになっていることに驚く。
「実用性を兼ね備え、デザインはもちろんのこと、赤ちゃんの肌に触れるから綿生地が基本なんだ」
システム工学のことなら、そこら辺にいる人たちに負けない自信があるが、女性としての知識は底辺なのだと改めて実感する。
「赤ちゃんかぁ……」
「子供欲しいのか?」
「あっ、いっくん。お仕事済んだの?」
「ん、出張前にチェックしなければならなかっただけから」
「お疲れさま」
「で?……栞那は子供が欲しいの?」