鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
その後も彼のご両親の心境を聞き取りながら、最近の彼の様子を伝える。
「今の時代は本当に便利だよね。インターネットを繋げば、いつだってあの子の活躍を見ることができる」
最大手と言われるほど、アパレル業界でも知名度の高い会社に成長したBellissimo。
直接コンタクトが取れなくても、彼の活躍はずっと見守っているらしい。
容姿は父親似のようだ。
目鼻立ちのパーツも甘く響く声音も。
五十歳を過ぎたら、こんな風な彼になるのだろうと何となく想像がつく。
お母様は見た目華奢な感じで、大人しそうな日本人形のような雰囲気なのに、話し方がどことなく彼に似ている。
少し威圧感のあるような、それでいて相手の手の内の読み解くような鋭い眼差しが。
お嬢様育ちだからなのか、言葉の端々がサバサバしてるような感じが窺える。
「あの子の会社で……」
“お仕事は何を?”と尋ねられ、彼の会社でシステム部の責任者をしていると伝えたら、二人とも安堵した表情を浮かべた。
『あの子』
この部屋に入ってから、一度も息子の名前を口にしない二人。
それが返って、親子の溝を浮き彫りにしているようで胸が痛い。
「伊織さんの弟さんって、どんな方なんですか?」
「勇也は、真面目で頑張り屋な子だよ。だけど、兄を失ったせいで今も罪悪感に駆られ、人間不信なところはある。まぁ、私らが犯した罪の重さがそうさせているんだろうが」
「いつの日か、会って話せる日が来るといいですね」
今はまだ無理だろう。
彼の中で『家族』というものがまだ完成されてないから。
だけど、どんなに時間がかかったとしても、いつの日か、蟠りが無くなる日が来るといいなぁ。