鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


「社長、こちらは日本へ送りますか?」
「いや、いい。そんなに嵩張らないし、日本に帰ってから渡せば大丈夫だ」
「では、スーツケースのファスナー側に入れておきます」
「ん」

栞那へのお土産にオーガニックコットンでできたケープを購入した。

世界最高峰と言われるエジプト綿。
ナイル周辺の肥沃な土壌で採れる繊維の長い綿は、年間生産される約八千万トンのうち約三十万トンしか採れない希少な最高級コットンだ。
その希少価値のある厳選された綿花畑の専属契約を結び、次なる目的地アメリカ南西部へと向かう。

伊織は空港で搭乗待ちの間、スマホを確認した。

『今日こそボイメ(ボイスメッセージ)くれないと、ふてくされるからね!』

時差があり、リアルタイムで会話ができず。
メッセージのやり取りはするものの、やっぱり恋しくなる。

彼女からは結構小まめにメッセージが送られて来て、“おはよう”だとか“おやすみ”という簡単なボイメが送られてくる。
それだけで嬉しくて。
何度も聞き返し、夜はデレながらベッドに横たわって……。

あ、そうか。
俺も送らないとならないのか、って今さら気付く。

俺が嬉しいように、彼女も俺の声が聞きたいと思ってくれてるのか。
それすらも気恥しいな。

「何、ニヤニヤしてるんですか」
「失礼なやつだな」

出国して以来、三井に揶揄われる。
まぁ、三井の方が恋愛スキル高いし、経験も豊富なんだろうけど。

「向こうでのお土産はどうしましょうか?」
「目ぼしいものが無いよな」

グランドキャニオンなど有名な観光地はあるけれど、キーホルダーやスパイスのようなものばかり。

「早めに終わらせて、探すしかなさそうだな」

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