鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


「社長、喉を傷めますから水分摂って下さい」
「ん」

現地に着いたはいいが、標高が高く湿度が日本に比べて格段に低い。
お陰で気を抜くと喉を傷めてしまいそうだ。

アメリカ南西部の綿は世界三大綿として崇められ、その中でもオーガニックコットンはエジプト綿に次いで希少価値がある。
全米オーガニックプログラム(NOP)が定める、アメリカ合衆国農務省とテキサス州農務局の認証を得ている有機農場は少なく、アメリカでは三年以上無農薬で生産していないとオーガニックとは認められていない。
だからこそ、オーガニックファーマーとの契約は、プレミアムな製品付加価値があるというもの。

農園の主とは数年前からやり取りしていて、漸く今年、Bellisssimo専用の綿花畑が仕上がったと連絡を受けたのだ。
既存にある畑の契約はほぼ不可能で、専属契約を結ぶとなると数年かけて新たな畑を開拓するほか術がない。

何年にもわたって計画して来た企画が漸く実を結ぼうとしている。

「無事、締結できて一安心ですね」
「あぁ、手ぶらじゃ帰れないからな」
「さっき、農園主から何を貰ったんですか?」
「キャップ」
「帽子ですか?」
「あぁ、オリジナルブランドのロゴが入ったもので、限定三十個しかないらしい」
「三十分の一、凄いですね」
「いや、三十分の二」
「え?」
「結婚してるのか聞かれて、近々結婚すると話したら、ペアで下さった」
「おぉぉっ、粋な計らいですね」
「そうだな」

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