鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

三井の父親が言う“責める”とは、祖父を見殺しにしてしまったという後悔の念のことだ。
あの時、友人たちと遊ばずに真っすぐ帰宅していれば、異変に気付けたかもしれないという後悔。

時間は巻き戻せない。
だからこそ、反省する以外に術はない。

命がある限り、誰にでも平等に死が訪れる。
分かり切っていることなのに、未だにそれが受け入れられずにいるからだ。

「これからも命を大切になさることで、天国で御爺様も見守って下さいますよ」

祖父と住んでいた家に住むのが辛くて、今は三井の父親に管理を任せている。
三井の父親が祖父の会社を引き継ぎ、今も肌着メーカー『久宝』は存在している。

俺は祖父の築き上げた人脈とノウハウで新たに事業を立ち上げた。
同じフィールドで戦うのではなく、俺の会社の傘下として祖父の会社をこの先もずっと残していきたい。

「そうだな」
「きっと成海さんとのご縁も御爺様の計らいだと思いますよ」
「フフッ、上手いこと言うな」

栞那が俺のことを思ってした事なのは分かっている。
今さらどうにかなるというほど簡単なものではないし、なれ合うつもりもない。

ただ、俺が彼女の両親と親交を深めたいと思うのと同じで、彼女も同じ考えに至るのは理解出来るから。
栞那がした事に対して、とかやくいうつもりは無い。

「それと、真壁から報告があったのですが、どこからか、社長のご婚約の話が漏れているようです」
「ッ?!」
「今日社員食堂内において、その話が出ていたと。詳しいことは調査中ですが」
「……そうか。ま、いずれは明らかになることだし、伏せる必要性もないだろう」
「では、否定しなくても宜しいのですね?」
「あぁ、構わない」

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